八角(スターアニス)とは、トウシキミという木の実を乾燥させた和漢食材で、火鍋の「甘く広がる香り」をつくっている材料です。
星やヒトデのような形をしたあの実が、スープの香りの輪郭を決めています。2026年現在も、薬膳火鍋yangyangのマーラースープには八角を丸ごと入れています。逆に白湯スープには入れていません。同じ鍋でもスープごとに入れる材料を変えているからです。
この記事では、八角とは何なのか、どんな香りで何に使われ、火鍋の中でどんな役割を担っているのかを、松本で薬膳火鍋の店をやっている立場から解説します。
八角(スターアニス)とは?トウシキミの実を乾燥させた和漢食材

八角とはその名の通り、角がいくつも突き出した星のような形をした和漢食材です。見た目から植物の花や貝のようにも思われがちですが、正体は木の実を乾燥させたものです。
「トウシキミ」という木の果実

八角は「トウシキミ」という木の果実を乾燥させたものです。トウシキミは中国の福建省や雲南省などの山間部で栽培されている、背の高い常緑樹です。
この実が角が8つある星のような形をしていることから、八角と呼ばれています。実際に手に取ると角が6つや7つのものも混じっていて、きれいに8つ揃ったものばかりではありません。
スターアニスとも呼ばれる
八角は非常に強い甘い香りが特徴です。この香りが「アニス」と呼ばれる香辛料の香りに似ていることから、星の形をしたアニスという意味で「スターアニス」とも呼ばれます。
中国料理の定番ミックススパイス「五香粉(ウーシャンフェン)」にも八角は入っています。中華料理店から漂う独特の甘い香りの正体は、多くの場合この八角です。
八角の香りは臭み消しになる|シナモンとの使い分け
八角の独特の香りは肉の臭みを隠す働きがあることから、豚肉や鶏肉を使う中華料理・台湾料理によく使われています。台湾の魯肉飯(ルーローハン)や角煮の甘い香りは、八角によるものです。
日本でも餃子の餡に少量使われることがあり、ニラとニンニクの匂いをやわらげる役目を果たします。
香りの系統はシナモンと似ていて、どちらも鼻にツンとくる甘さを持っています。ただし八角のほうが香りが強く、少量でも料理全体を支配します。そのため一般的には、シナモンはお菓子に、八角は肉料理に使い分けられています。家庭で八角を使うなら、2〜4人分の煮物に1個が目安です。2個入れると、料理より八角の香りが前に出てしまいます。
同じように香りで火鍋を支えている材料としては、香りに重みを出す草果(そうか)や、すっきりした清涼感を足すフェンネルがあります。八角はその中で「甘く広がる方向」を担当しています。
八角は体にどう働くと言われてきたか

八角は、中国で古くから料理と和漢の両方に使われてきた材料です。昔から次のように言い伝えられてきました。
- 体を温める食材として親しまれてきた
- 食が進む香りとして使われてきた
- 気のめぐりを整えると考えられてきた
このうち、もっともよく語られるのが体を温める食材として親しまれてきたという点です。「火鍋を食べると体が温まる気がする」という声をお店でよくいただきますが、八角のように体を温める食材として親しまれてきた材料が何種類も入っていることが、そのイメージにつながっているのかもしれません。
ただし、これらはあくまで昔から言い伝えられてきたことであり、八角を食べれば何かが治る・効くというものではありません。八角は薬ではなく、香りを楽しむ食材として捉えてください。体調に不安がある方や妊娠中の方、お薬を服用中の方は、念のためかかりつけの医師にご相談ください。
タミフルの原料として知られた時期があった
八角は、インフルエンザ治療薬タミフルの合成原料として話題になったことがあります。これは八角から採れる「シキミ酸」という成分が、十数段階の化学反応を経てタミフルの成分に変換できたためです。
誤解されやすいので、はっきり書いておきます。八角そのものにインフルエンザへの効果はありません。工業的な出発物質として使われていたという話です。現在ではシキミ酸は発酵法で生産されており、八角は原料として使われていません。
yangyangの火鍋には八角が丸ごと|マーラースープだけに入れる理由

薬膳火鍋yangyangでは、他の和漢食材との香りの相性やスープ全体のまとまりを何度も試作して検証した結果、マーラースープのみに八角を丸ごと入れています。
理由は単純です。マーラースープは唐辛子と花椒という、強くて角のある香りが主役のスープです。そこに八角の甘い香りが加わると、尖った部分が丸くなって飲みやすくなります。一方で白湯(パイタン)スープは、鶏と豆乳のやさしい旨味を素直に味わうスープです。ここに八角を入れると、香りが前に出すぎてスープ本来の繊細さが隠れてしまいます。だから白湯には入れません。
もうひとつ、作り方の面でも八角の扱いは決まっています。火鍋のスープは香り移し(油)と煮出し(水分)の二段構えでできています。八角や花椒、唐辛子のような香りの材料は油に香りを移し、ナツメやクコの実のような旨味の材料は水分で煮出します。この2つは同時には出せません。八角を水だけで煮ても、あの甘い香りは立ってきません。市販の火鍋の素を選ぶときに香りの質が分かれるのは、ここに手間をかけているかどうかの差です。
この違いは火鍋の素の選び方でも触れていますし、二色鍋で麻辣と白湯を食べ比べると香りの方向の違いがはっきり分かります。食べる順番については火鍋の食べ方もあわせてご覧ください。
ご自宅で八角の香る火鍋を楽しむには
松本の店舗で出しているものと同じ配合のマーラースープは、そのままご自宅でもお楽しみいただけます。八角が丸ごと入っているので、袋を開けた瞬間から甘い香りが立ちます。
自宅で香りを活かすコツは3つあります。
- 最初から強火で煮立てすぎない……香りは温まる過程で立ってきます。沸いたら火を落として具材を入れてください。
- 煮詰まったら水ではなく湯を足す……水を足すと温度が下がり、香りも味も一段落ちます。
- 八角は食べずに残す……実は固く、噛んで食べるものではありません。香りを移す役目を終えたら器の端に置いておきます。
ご自宅用のスープはAmazonの薬膳火鍋yangyangのページからご注文いただけます。辛さが心配な方は、麻辣と白湯を二色で用意して食べ分けるのが失敗しない買い方です。注文前に決めておきたいことは薬膳鍋のお取り寄せガイドにまとめました。具材選びは火鍋に合うおすすめ具材15選、最後の〆は火鍋の〆完全ガイドが参考になります。
まとめ|八角は火鍋の甘い香りを決める材料
八角(スターアニス)はトウシキミという木の実を乾燥させた和漢食材で、強く甘い香りが特徴です。肉の臭みをやわらげる使い方で中華料理や台湾料理に広く使われ、火鍋では香りの輪郭をつくる役割を担っています。
薬膳火鍋yangyangでは、唐辛子と花椒の角を丸くする目的でマーラースープだけに八角を丸ごと入れ、白湯スープには入れていません。スープごとに入れる材料を変えているのは、それぞれの味の良さを一番活かせる形を探した結果です。
八角の香りそのものを味わうなら、まずは麻辣スープから試してみてください。麻辣スープの作り方とアレンジでは、辛さとしびれを別々に調整する方法も紹介しています。





