白湯(パイタン)スープで鍋を作るときのコツは、具材をたくさん入れないことです。白湯は辛味で輪郭をつけるスープではないので、具材を入れすぎるとそれぞれの味が混ざり、せっかくの鶏の旨味がぼやけてしまいます。
長野県松本市で薬膳火鍋の専門店を営むyangyangでは、白湯スープを親鶏から長時間煮込んで作っています。店で毎日お出ししている経験から言うと、白湯の鍋は「主役の具材を1つ決めて、脇役を3〜4種に絞る」だけで味がはっきりします。この記事では、その考え方にそった白湯鍋のレシピを3つ、材料の分量と煮る順番つきで紹介します。
白湯スープの鍋レシピは「具材を絞ること」から始まる
白湯スープは、鶏と和漢食材の旨味が溶けた澄んだ味わいのスープです。麻辣スープのように唐辛子や花椒の強い刺激がないため、入れた具材の味がそのままスープに出ます。これは利点でもあり、難しさでもあります。
当店でも、白湯スープは具材の相性が素直に出るスープだと考えています。きのこを3種類も入れれば出汁がきのこ寄りになり、葉物を山盛り入れれば水分が出てスープが薄まります。だからレシピを組むときは、次の3つを先に決めてください。
- 主役を1つ決める(鶏・ラム・海鮮のどれか)
- 脇役は3〜4種まで(葉物1・きのこ1・豆腐や練り物1・薬味1が目安)
- 〆を決めてから具材を買う(雑炊なら塩気を控え、麺なら濃いめに残す)
白湯スープそのものの成り立ちについては白湯(パイタン)スープとは|火鍋の辛くない白いスープの正体と麻辣との違いで詳しく書いています。スープの素の扱い方の基本手順は【ご家庭での火鍋の食べ方】白湯スープの食べ方をあわせてご覧ください。
白湯スープの鍋レシピ3選
いずれも2人分の目安です。当店では宴会のとき、1人あたり具材400〜450g(肉120〜150g・野菜200g・豆腐やきのこ100g)を基準にしています。この配分をそのまま家庭用に落としたものが下のレシピです。
レシピ1|鶏と白菜の基本の白湯鍋
白湯スープのいちばん素直な食べ方です。鶏もも肉250g、白菜1/4株、しいたけ4枚、木綿豆腐1/2丁、長ねぎ1本。白菜は芯と葉を切り分けておくのがポイントです。
手順は、スープを煮立てたら芯の部分としいたけを先に入れて3分、次に鶏もも肉を広げて入れて火が通るまで5分、最後に葉と豆腐、長ねぎを加えてひと煮立ちさせます。鶏の脂が白湯に溶けると、スープのコクがひと段落上がります。鶏は皮つきのまま使ってください。
レシピ2|ラム肉と香味野菜の白湯鍋
当店で火鍋といえばラム肉ですが、実はラムの香りがいちばんよく分かるのは麻辣ではなく白湯のほうです。ラム薄切り250g、水菜1/2袋、えのき1袋、クコの実とナツメを少量、ショウガ薄切り3枚。
ショウガとクコの実、ナツメはスープと一緒に最初から煮出します。えのきを入れて2分ほど待ち、ラム肉は1枚ずつ、10〜15秒くぐらせて引き上げてください。煮込むと硬くなるので、肉は鍋に置かないのがコツです。水菜は食べる直前に。ラム肉を火鍋に使う理由は火鍋になぜラム肉が使われるのか?でも紹介しています。
レシピ3|海鮮ときのこの白湯鍋
辛いものが苦手な方やお子様と囲むときは、この組み合わせが外れません。えび6尾、タラや鮭の切り身2切れ、はまぐりかあさり150g、まいたけ1パック、春菊1/2袋。
貝類は口を開かせる役目があるので最初に入れます。続いてまいたけ、そのあと切り身、えび、最後に春菊という順番です。海鮮は火を通しすぎると身が締まるため、えびは色が変わったらすぐ取り上げてください。貝の塩気が出るので、味を足す前にひと口飲んで確かめてください。具材選びに迷ったら火鍋に合うおすすめ具材15選も参考にしてください。
どのレシピでも変わらない「煮る順番」
白湯鍋は、火の通りにくいものから順に入れるのが基本です。順番は、根菜やきのこ・白菜の芯 → 肉 → 豆腐や練り物 → 葉物の4段階で覚えてしまうと迷いません。
この順番には理由があります。先に硬いものを入れて出汁を足し、そのスープで肉を煮ることで肉がおいしくなる。葉物は水分を出すので最後に入れ、スープが薄まる前に食べきる。具材を入れる順番で旨味がどう変わるかは火鍋の食べ方|具材を入れる順番で旨味が変わるにまとめてあります。
もうひとつ、白湯鍋で知っておいていただきたいのが香りの出方です。香りは油に移り、旨味は水分に出ます。当店ではこれを二段構えと呼んでいて、八角のように香りの強い和漢食材を白湯に入れないのもこのためです。鶏と豆乳のような繊細な味は、強い香りを足すと隠れてしまいます。白湯の鍋では、香りを足すより引き算を意識してください。
白湯鍋を失敗させない3つのコツ
1. 煮詰まったら水ではなく湯を足す
冷たい水を足すと、せっかく上がった温度が落ちてスープの表情が変わります。やかんに湯を用意しておき、減ったぶんだけ足してください。これは店でも卓のそばに必ず湯を置いている理由です。
2. 強火で煮立てすぎない
白湯は沸かし続けると水分が飛び、塩気だけが濃く残ります。一度煮立てたら中火を保ち、ぐらぐらさせないほうが最後まで同じ味で食べられます。
3. 味は鍋ではなく取り皿で足す
当店では毎日のように味の相談を受けますが、答えはいつも同じで「鍋の味は中間に置いて、取り皿で調整する」です。白湯鍋でも、ラー油・おろしニンニク・ポン酢・刻みねぎを小皿に用意しておけば、同じ鍋で全員が自分の味にできます。辛さを足したい方がいる場合は、麻辣スープを別鍋で用意するか、麻辣スープの作り方とアレンジの辛さ調整を参考にしてください。
ご自宅で白湯スープの鍋を楽しむには
白湯スープは、鶏から自分で引こうとすると数時間かかります。ご家庭で店と同じ味から始めたい場合は、専門店のスープをそのまま使うのがいちばん確実です。
yangyangの火鍋スープは、松本の店舗でお出ししているものと同じ配合で作っています。クコの実・ナツメ・草果・フェンネルなど十数種の和漢食材を使い、油に香りを移す工程と水分に旨味を煮出す工程を分けて仕上げています。これらの食材は古くから体を温める食材として親しまれてきたもので、白湯スープにはそのなかでも穏やかな香りのものを合わせています。
ご自宅用にはAmazonの薬膳火鍋スープをご利用いただけます。辛いのが苦手な方と一緒に囲むなら、白湯と麻辣を二色で用意しておくと取り分けが楽になります。スープの選び方は火鍋の素おすすめの選び方、注文前に決めておくことは薬膳鍋のお取り寄せ完全ガイドに書いています。
そして白湯鍋は〆までがレシピです。残ったスープは鶏と具材の旨味が溶け込んでいるので、雑炊にしても中華麺を入れてもおいしくなります。〆の選び方は火鍋の“〆”完全ガイド、人数が増える日の段取りは鍋パーティーの準備リストをご覧ください。
まとめ
白湯スープの鍋レシピで大事なのは、主役を1つに決めて脇役を絞ること、硬いものから順に煮ること、味は取り皿で足すことです。この3点だけで同じスープの味がはっきりします。
鶏と白菜、ラムと香味野菜、海鮮ときのこ。今回の3つはどれも当店の卓でよく出ている組み合わせです。寒くなるこれからの季節、辛くない薬膳鍋としてぜひ試してみてください。





